大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)1032号 判決

被告人 碓氷嘉津彌

〔抄 録〕

控訴趣意第一点に対する判断。

思うに、勾留するための手続として被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴く場合、証人を尋問するとき、若しくは検察官、被告人又は弁護人を出頭させて準備手続をするときなど、直接相手方の自由を奪うことに関連し又は供述の義務を伴う場合などには、憲法第三一条の精神に則つて、刑事訴訟規則において、いずれも裁判所書記官を立ち会わせなければならない旨規定しているところである。しかしながら、所論被疑者又は第三者の取調は、刑事訴訟法上、いわゆる任意搜査を建前とし、同法第一九八条及び第二二三条において、その取調及び調書作成の方式をくわしく規定し、もつて相手方の基本的人権の保障を全うすることを期しているのであるから、その取調に際して司法警察員又は検察事務官の立会を要する旨の規定がなされていないからといつて憲法第一三条の個人の尊重又は同第三一条の法定手続の保障の規定又はその精神に違背するものではないというべきである。

なお同法第一四条は、同一の法の適用を受くべき立場において、すべての国民は平等であるべき規定であつて、同一の個人が相手方を異にする場合に必らず法律上同一の取扱を受くべき趣旨ではないから、同一の個人が裁判官の面前と司法警察官又は検察官の面前とにおいて同様に取り扱われないことが憲法の右法規の趣旨にそわない旨の所論は筋ちがいというべきである。また被疑者又は第三者の供述調書の作成者はその取調をした者であることは刑事訴訟法第一九八条第三項からも窺われるところであり、取調官を補佐する司法警察員又は検察事務官が立ち会う場合においては、その者が調書を作成して取調官と両名連ねて署名押印するのを通例とするのであつて、法規上該調書の作成者について明確な規定がないからといつて、それが直ちに憲法の条規に違背するものである旨の所論にいたつては、独自の見解に過ぎないものというべく、とうてい賛同できないところであるから、現行刑事訴訟法上搜査における取調及び調書作成の方式に関して、所論の規定がないことを目して憲法第一三条、第一四条及び第三一条に違背するものであるとの前提の下に、広瀬仁平及び被告人の司法警察官又は検察官に対する供述調書又はその謄本を被告人の有罪を認定する資料となした原判決を非難する所論は排斥するの外なく、該論旨は理由なきものである。

(中野 尾後貫 堀真)

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